背景
急性胆管炎は胆管内に急性炎症が発生した状態を指します。
この発生には2つの因子が不可欠とされており、ひとつが胆管内に多くの細菌が存在していること、もうひとつが細菌または細菌が産生する毒素(エンドトキシン)が血流内に逆流するような胆管内圧の上昇とされています。
胆汁内の細菌やエンドトキシンが血中やリンパ流中に移行することで、敗血症などの重篤な感染症に進展し、致死的な状態に陥りやすくなります。
急性胆管炎の死亡率は2.7-10.0%とされており、重症化して多臓器不全を引き起こしてしまうと生命予後に関わる疾患であると言えます。
原因
急性胆管炎の成因は胆道閉塞(胆汁うっ滞)と胆汁内の細菌増殖(胆汁感染)により起こります。
胆道閉塞の原因のうち頻度が高いものは、総胆管結石、良性胆道狭窄、胆道の吻合部狭窄、悪性疾患による胆道狭窄とされており、悪性疾患に伴うものは全体のうち10-30%存在すると報告されています。
胆汁内の細菌感染は、胆嚢炎や胆道閉塞状態の場合や胆道以外の術後に陽性となる場合があります。また、黄疸を伴うような総胆管結石が生じている場合は、その多くが胆汁内に細菌が同定されるとされています。
胆道感染の危険因子としては、高齢、緊急手術後、急性胆嚢炎の既往、黄疸、総胆管結石、胆管の検査や処置の既往、胆管空腸吻合術後、総胆管閉塞など、種々の因子が挙げられます。
重症度
急性胆管炎は敗血症から急速に状態が悪化しうるため、迅速かつ適切な対応が求められるとされており、3つの重症度に分類されています。
重症急性胆管炎は、循環障害や中枢神経障害、呼吸機能障害、腎機能障害、肝機能障害、血液凝固異常のいずれかを伴う場合を指し、緊急的に胆道ドレナージが施行されます。
中等症急性胆管炎は、白血球の増加や発熱、黄疸や低アルブミン血症を伴う場合を指し、速やかに治療が必要とされる場合とされています。
検査
急性胆管炎は、①全身の炎症所見と②胆汁うっ滞所見、③胆管病変の画像検査所見の3つが診断基準として評価されます。
①全身の炎症所見
・発熱(悪寒を伴う場合もある)
・血液検査:炎症反応所見 白血球数異常、血清CRP上昇など
②胆汁うっ滞所見
・黄疸
・血液検査:肝機能検査異常 血清ALP、γ-GTP、AST、ALTの上昇
③胆管病変の画像検査所見
・胆管拡張
・胆管炎の成因:胆管狭窄、胆管結石、胆管ステントなど
急性胆管炎の成因検索として、胆道狭窄の証明に対してはエコーまたはCTのどちらかを行うことが推奨されており、急性胆管炎の成因診断や炎症の評価にはMRが推奨されています。
エコー像
急性胆管炎の評価においては、胆管拡張や胆管内の異常エコーの有無を評価する必要があります。
胆管炎に特徴的なエコー像というものは存在していないため、他の各種検査と組み合わせて総合的に診断されます。
ここから先は急性胆管炎と診断されたエコー像を提示します。
総胆管の拡張は認めないが、胆管壁が厚い、または胆管内にデブリエコーが存在しているためか、胆管内腔の無エコーが消失しています。胆嚢頸部周囲には源平なリンパ節の腫大像が散見されます。
肝臓の内部エコーはやや低輝度化し、胆管壁が目立ちます。胆嚢壁は浮腫状に肥厚しており、肝炎と胆管炎が疑われるエコー像であると考えられます。
遷延する肝機能障害が原因不明であったため、肝生検が行われた結果、著明な肝炎と胆管炎が存在している病理像でした。
軽度拡張する肝内胆管と肝門部の総胆管壁が肥厚している像が見られます。主膵管の拡張はみられません。
膵頭十二指腸術後の胆管炎を繰り返す症例でした。
胆嚢壁肥厚と胆嚢内にデブリエコーが貯留していることがわかります。
総胆管に目を向けると拡張は認めないものの、胆管内にもデブリエコーが存在していることが確認できます。明らかな結石像は認めません。
MRCPにおいて胆嚢内debris、胆管壁浮腫状肥厚、肝内のperiportal collerが確認され、胆管炎が疑われました。
胆嚢壁の全周性肥厚と壁の層構造、径20㎜弱の結石とデブリエコーの存在が確認できます。
総胆管はやや拡大し、胆管内にデブリエコーが存在しています。
他の画像検査においても胆嚢炎・胆管炎が疑われたため、外科的治療が行われました。
参考文献
まとめ
急性胆管炎の背景、原因、重症度、検査、エコー像についてまとめました。
急性胆管炎には特徴的なエコー像というものが存在しないため、エコーで確認しうる胆道系を含んだ各種所見を見逃しなく観察することが求められます。
急性胆管炎は重篤化すると生命を脅かしかねない疾患であるため、注意深く評価していきたいですね。
閲覧いただきありがとうございました。