ナットクラッカー現象とは
ナットクラッカー現象とは、左腎静脈が腹部大動脈(Aorta)と上腸間膜動脈(SMA)との間に挟まれ、狭小化することで、左腎静脈内圧が上昇する状態を指します。この結果、左腎の微細な静脈が破綻することで血尿の原因となります。
血尿を生じますが、痛みを生じることは少なく、経過観察とされることが多いです。
原因
左腎静脈が腹部大動脈(Aorta)と上腸間膜動脈(SMA)との間に挟まれ、狭小化することで生じます。
痩せた方でたびたび見られます。
診断
血尿の原因精査は必要であり、腎炎や尿路結石、膀胱炎、種々の癌などが除外された場合に、ナットクラッカー症候群が疑われます。
ナットクラッカー現象はエコーで特徴的な所見を得ることで確認することができます。
エコー像
ナットクラッカー現象のエコー像の特徴を以下に挙げます。
1. 腹部大動脈(Aorta)と上腸間膜動脈(SMA)の間に細くなった左腎静脈が存在している。
2.狭窄部より左腎側の左腎静脈が拡大している。
3.狭窄部より下大静脈側の静脈血流が亢進している。
4.左腎内静脈が拡大している。
ナットクラッカー症候群のエコー像を提示します。
AortaとSMAに挟まれた左腎静脈のエコー像です。
左腎静脈のうち、狭窄部位(径1.1mm)よりも左腎側は径6.5mmと拡張していることがわかります(IVC側も1.5mmと細い)。
ドプラモードを使うことでより分かりやすくなります。
左腎静脈の狭窄部位ではカラードプラの折返し現象が生じており、血流速度が速いことが示唆されます。
実際にパルスドプラより、左腎静脈のうち狭窄部位よりIVC側は2.5m/sec程度の高速血流が観察されます。一方、狭窄部位よりも左腎側では0.2m/sec程度の低速血流が観察されます。
左腎内の静脈が拡張していることも、ナットクラッカー現象を疑う所見のひとつです。
参考文献
おわりに
ナットクラッカー現象についてエコー像を中心にしてまとめました。
血尿の原因精査を行う上では知っておくべき知識のひとつだと思います。
やせ型、症状なしの血尿精査の場合は疑って検査することも必要です。
閲覧いただきありがとうございました。