門脈血栓とは
門脈内に血栓が生じることで、門脈が閉塞したり狭窄する疾患です。
門脈に血栓が存在すると、門脈圧が亢進します。
門脈圧亢進により脾静脈や食道静脈、胃静脈の静脈内圧が上昇し、瘤化を引き起こします。これにより脾腫や食道静脈瘤が引き起こされます。
門脈圧亢進は肝硬変の場合に起こりやすく、これらの方が起こす吐血は上記静脈瘤の破綻に依ることが多いとされています。
原因
門脈血栓は肝硬変の方によくみられます。
これは肝機能低下により肝臓内に門脈血が循環しづらくなり、門脈血流の低下、門脈血栓の形成につながるからです。
また、赤血球増多症や血栓形成を促すような種々の癌により生じることがあります。
診断
門脈圧亢進を疑うような病態(脾腫や食道静脈瘤・胃静脈瘤の存在)であれば、門脈血栓を疑います。また、腹水貯留や腹部膨満感も門脈血栓を疑う所見のひとつです。
血流評価を加えたエコー検査で門脈血栓の存在を確定することができます。
CTやMRを行い確定診断する場合もあります。
エコー像
門脈血栓症のエコー像の特徴を以下に挙げます。
1.門脈内が無エコーではなく、構造物が存在している(門脈内の腫瘍栓と鑑別が必要)
2.ドプラモードを使用して門脈内の血流シグナルが消失、減少している所見が重要。
門脈血栓症のエコー像を提示します。

右肋間から門脈を観察している像です。
門脈内に肝臓とほぼ等しい輝度の構造物を認めます。
ドプラモードにより構造物を縫うような血流が存在していることがわかります。
門脈内に血栓が存在し、門脈が不完全閉塞を起こしている像です。

上腸間膜静脈(SMV)と脾静脈(SpV)との合流部に血栓が存在しています。
門脈血栓は血管壁に付着するように存在する場合もあるため、見逃さないように注意が必要です。

矢印の部分に門脈血栓を認めます。不完全閉塞状態です。
ドプラモードを使用するとより詳細な画像を得ることができます。
参考文献
おわりに
門脈ガス症の原因、診断、エコー像についてまとめました。
門脈血栓は慎重に観察しておかないと見落とす可能性のある病変です。肝機能が悪そうな場合や、腹水・腹部膨満感のある状態では、常に念頭において検査を進めていきたいところです。
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