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膀胱癌とエコー像(Bladder cancer and the echo images)

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背景

膀胱癌は尿路上皮から発生する癌を指します。種類としては尿路上皮癌が最も多いとされていますが、扁平上皮癌や腺癌の特徴を有する場合も少なくないと言われています。

膀胱癌発見の契機としては、検診などで顕微鏡的血尿を指摘された場合や肉眼的血尿の出現、排尿時痛や残尿感などが挙げられます。

膀胱癌は男性に多く、高齢であるほど罹患率が増加するとされており、若年層より高齢層に悪性度の高いがんが多いと言われています。

  
  

検査していても罹患率は男性が圧倒的に多い印象がありますし、実際に統計では3:1とされています。

30代、40代の若齢でもまれに指摘されますのでご注意を。

   

原因

確立したリスク因子としては喫煙が真っ先に挙げられます。

他には工場で使用されるアニリン色素や、染料化学薬品鎮痛剤慢性炎症(尿路結石などによる)、シクロホスファミドなどの抗がん剤も重要なリスク因子とされています。

   

予防のためには喫煙しない、危険な薬剤を使用しない(直接接触を避ける)ことが必要となります。水分を出来る限り摂取することも有用であるとされています。

   

特徴

膀胱癌(尿路上皮癌)は同時性、異時性に発生することが特徴といえます。

そのため、一度膀胱癌と指摘されたら、治療後も定期的に検査を行い、再発の早期発見に努めることが肝要になります。  

   

検査

まずは尿検査でスクリーニングされます。
同時に提出された尿検体で病理学的検査(細胞診)が行われ、顕微鏡下で異型細胞の有無が評価されます。

  

尿検査や細胞診で要精査とされると画像検査に移ります。

  

画像検査のスクリーニング法としてまずはエコー検査が挙げられます。

エコーは侵襲性が少なく、泌尿器系の臓器(腎臓、尿管、膀胱、前立腺)を観察できるところが利点といえます。例えば尿検査で潜血反応がでた場合、それが腎臓に起因するものなのか、膀胱に依るものなのかなどをさらっと観ることができるのです。
  

また、膀胱癌のうち膀胱粘膜から隆起しているような腫瘍の場合はエコーで指摘することができます。特に大きさが3~5mmを超えるような腫瘍があった場合は、見逃さないように注意しなければなりません。

  
  

しかしながら、エコー検査で全ての異常がわかるわけではなく、超音波装置や検査者の力量、検査時の環境(膀胱内の尿量や腸管ガス)などにより明らかになることは変化します。とくに尿管や膀胱の全体像を確実に評価することは難しいといわざるを得ません

また、膀胱内に腫瘍があったとしても、非常に小さな病変や尿管上皮に扁平に隆起している(上皮内癌)ような病変の場合は見逃してしまう可能性があります。

    

実際にエコーで膀胱癌が疑われたとしても、病理学的評価によって異なる診断(例えば膀胱炎などの炎症性病変)が下される場合もあるため、検査者は自己研鑽のためにも自分が記した結果を振り返る癖をつけておきたいですね。

  

    

膀胱癌に対する画像検査の代表的なものは膀胱鏡検査であり、この検査でたいていの膀胱癌は検出されます。

侵襲性が若干ありますが、機器の進歩により緩和されているようなので安心して検査を受けることができます。

  

エコーや膀胱鏡で膀胱癌が積極的に疑われた場合は、腫瘍の深達度や転移の有無を評価するためにMRやCTが行われることになります。 

  

  


ここで少し話が変わりますが、膀胱内の尿量を知りたい場合の測定法に関して記載しておきます。

これは測定方法の一例です。

膀胱内尿量:(左右)×(前後)×(上下)×π/6 ≒ (A)×(B)×(C)×0.52

Aは膀胱の横幅径、Bは膀胱の前後径、Cは膀胱の縦幅径となります。
膀胱の形は尿の充満している程度により変化するため、正確な測定は難しいですが、概算することは可能となります。


  

  

病理像

膀胱癌(尿路上皮癌)は大きく分けて非浸潤性病変と浸潤性病変とに分けられます。

さらに非浸潤性病変は乳頭状病変と平坦病変(上皮内癌)に分けられます。

  

乳頭状病変は低異型度から高異型度の2つに分類され、平坦病変と浸潤性病変は高異型度に分類されます。

  

スクリーニング検査として用いられる尿細胞診において、尿路上皮癌の領域では高異型度病変を診断することは可能とされており、低異型度病変を診断することは困難な症例が多いとされています。

  

そのため、乳頭状非浸潤性病変をエコー検査で指摘することができると、低異型度から高異型度まですべての膀胱癌をスクリーニング検査で拾い上げることができるため、それぞれの検査がさらに有益な検査へと昇華することになります。

   

   

エコー像

膀胱癌においては、代表的なエコー所見として確立しているものは存在しません。

  

ただし、膀胱の縦断像と横断像を観察したうえで、

『膀胱の内膜面から、膀胱内腔側に、限局的に、隆起(突出)している、充実性の領域』

は膀胱癌を積極的に疑ってもよいと考えます。

  

このとき、体位変換により移動しないことや形状が変化しないことが条件として挙げられます。

充実性領域における血流の有無は、エコー機器の性能に左右されるため観察できるか否かは難しいところですが、癌の場合は栄養血管が存在するため、動脈血流が観察されることが少なくありません。

必要によっては高周波プローブを使用し、ドプラ感度を上げる工夫も必要になるかと思います。

   


ここから先は「病理検査にて膀胱癌と診断されたエコー像」を提示します。

   

膀胱の横断像です。左側は低周波プローブ、右側は高周波プローブを使用しています。
膀胱の左側壁に径4㎜程度の隆起性病変を認めます。

限局性に隆起していることを確認して肉柱形成の像ではないことや、体位変換を行うことで結石でないことを確認する必要があります。
このような微小な腫瘍の場合はドプラシグナルを検出できない場合が多いです。

病理検査の結果、 non invasive papillary urothelial carcinoma であることがわかりました。

   

   

左側が膀胱の横断像、右側が膀胱の縦断像になります。
膀胱の左側壁に径10㎜程度の隆起性病変を認めます。

腫瘍の表面はやや不整、内部エコーは基部がやや低輝度で他領域は膀胱壁と等輝度です。
内部に動脈血流の流入が観察されたので充実性腫瘍であることが予想されます。

膀胱鏡で腫瘍を観察すると、エコー像と同様に表面に凹凸のある乳頭状腫瘍であることがわかりました。

病理検査の結果、 non invasive papillary urothelial carcinoma であることがわかりました。

     

      

左側が膀胱の横断弱拡像、右側が高周波プローブを用いた同部位の強拡像になります。
膀胱壁の右側壁、体表近くに膀胱内腔側に突出する隆起性病変を認めます。

径10㎜程度の隆起性病変が確認できます。表面はやや不整、内部エコーは膀胱壁と等輝度の腫瘍であることがわかります。

同部位は膀胱壁のくびれが生じやすく、腫瘍が存在していたとしても見逃しやすい領域であるかと思います。注意深く観察することが肝要です。

病理検査の結果、invasive papillary urothelial carcinoma であることがわかりました。

  

    

左側は膀胱壁の横断像、右側はその拡大像です。
膀胱三角部に膀胱内腔側に突出する20㎜程度の隆起性病変を認めます。

表面はやや不整、内部エコーは膀胱壁と等輝度、血流(+)の腫瘍が観察されます。

内部に血流が確認できない場合は、凝血塊の可能性もあるため、体位変換を行い移動性の有無を確認することにしたほうがよいと考えます。

病理検査の結果、invasive papillary urothelial carcinomaであることがわかりました。

  

   

上が膀胱の横断像、縦断像であり、下が膀胱の横断像になります。
膀胱三角部に内腔側に突出する径20㎜の隆起性病変を認めます。

先ほどの症例と同様に表面はやや不整、内部エコーは膀胱壁と等輝度、血流(+)の腫瘍が観察されます。腫瘍内部に微小な高輝度像を認めるため、石灰化を伴っている可能性があります。 

この症例では内部に太い栄養血管を確認することができました。

病理検査の結果、 non invasive papillary urothelial carcinoma であることがわかりました。

   

       

参考文献

 

 

 

  

まとめ

ここでは膀胱癌の背景、原因、特徴、検査法、病理像、エコー像についてまとめました。

特にエコー像に関しては膀胱腫瘍の画像とともに観察するときの注意点なども記載しておりますので、参考にしていただきたいと思います。

膀胱は注意深く観察しないと微小な病変を見逃してしまう可能性があります。
横断像、縦断像を組み合わせて評価したいですね。

閲覧いただきありがとうございました。

  

  

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