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肝硬変とエコー像(Cirrhosis and the echo images)

消化器
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肝硬変とは

肝炎ウイルスやアルコールなどの度重なる刺激により、肝細胞の破壊と再生が繰り返された結果、肝臓全体に線維化とそれに伴う結節が認められるものを指します。

通常のヒトの肝臓表面はツルっとして瑞々しく、まさに調理前の鳥や豚のレバーを想像したとおりの形をしています。しかしながら、肝硬変となった肝臓は、表面が凸凹であり、薄ら赤黒い岩のような形に見えます。

肝臓は、ある程度の刺激に対しては自らを犠牲にして生体の恒常性を保ちます(代償性肝硬変)が、許容を超える刺激が訪れると肝機能低下とともに様々な合併症が生じます(非代償性肝硬変)。

再生能力の高い臓器の代表格である肝臓は、肝硬変と診断される前にその原因(ウイルスやアルコール、薬剤)を早期に取り除くことで十分に予防することが可能です。

そのためにも早期に診断されることが重要な疾患のひとつであるといえます。

   

原因

肝硬変の代表的な原因を以下に挙げます。

・ウイルス性肝炎(B型肝炎、C型肝炎 etc. )

・アルコール性肝炎

・自己免疫性肝疾患

・非アルコール性脂肪肝炎(NASH)など

2020年現在、肝硬変に罹患している方は20~40万人程度存在しているとされており、そのうち概算で50%がC型肝炎ウイルスによるもの、12%がB型肝炎ウイルス、19%がアルコール性肝炎、3%が自己免疫性、6%がNASHによるものとされています。 

     

症状

肝機能低下・肝硬変になると、非常に様々な症状が表出します。

それぞれの合併症が一度に現れるわけではなく、肝硬変の重症度により徐々に合併症が増えていくことになります。

1.食欲不振、易疲労感

2.体重減少、手掌紅斑

3.門脈圧亢進にともなう合併症;脾腫、各種静脈瘤

4.腹水、胸水の貯留

5.浮腫

6.脾腫に伴う合併症;汎血球減少、貧血、凝固能低下

7.黄疸

8.女性化乳房、肝性脳症、羽ばたき振戦、こむら返り

9.肝細胞癌     など

生体内における肝臓の重要性が改めてわかります。

     

検査

血液検査

肝逸脱酵素をはじめビリルビン代謝や尿素回路に関係する項目、アルブミンや総タンパク、凝固能(PT)、線維化マーカーであるヒアルロン酸やコラーゲンも指標となります。加えて脾腫に伴う血球減少の程度や、原因疾患を検出するための肝炎ウイルス検査や自己免疫学的検査も重要な検査項目となります。

AST, ALTと年齢、血小板数から算出されるFib-4 indexは肝線維化の指標として知られており、簡易的に算出することができるため有用とされています。

画像診断

腹部超音波検査とCTでは特徴的な肝硬変の像を得ることが出来ます。

胃カメラ

門脈圧亢進に伴う食道や胃の静脈瘤の有無を評価します。

静脈瘤が破裂すると大量出血を生じ、生命の危険に繋がります。

    

Child-Pugh分類

残存する肝機能の程度を評価する指標としてChild-Pugh(チャイルド・ピュー)分類が屡々用いられています。

Pugh RN et al: Transection of the oesophagus for bleeding oesophageal varices. Br J Sur. 1973 Aug;60(8):646-9.

合計点でA-Cに分類され、Aは安全に治療を行える場合、Cは侵襲のある積極的な治療が行えない場合を指します。A:5-6, B:7-9, C:10-15

    

エコー像

肝硬変になると、一般的には肝臓の左葉が腫大し右葉は委縮します。また、肝臓の辺縁は鈍化し、肝表面に凹凸が見られます。肝内部のエコー像は粗く、カサカサしたようなエコー像が見られます。

肝細胞癌の有無を確認することが重要ですが、そのほかにも門脈圧亢進に伴う臍傍静脈や胃静脈、食道静脈の拡張、門脈血栓の有無、脾腫の有無を確認しておく必要があります。

また、腹水の貯留やリンパ節腫大の有無も確認しておきたいところです。

     

近年の医療技術の進歩により、非侵襲的に肝臓の硬さ(肝硬度)の程度を測定することができるようになりました。

肝硬度は肝線維化進展度とよく相関するといわれており、肝硬変の早期診断に役立つとされています。

超音波診断装置にて測定可能となってきているため、今後のさらなる進展が期待されています。

     


ここから先は肝硬変のエコー像を提示します。

   

アルコール性肝硬変のエコー像です。

肝臓表面は凹凸しており、辺縁は鈍化しています。

肝内部のエコーは粗く、低輝度域と高輝度域が不均一に存在する像を呈しています。

     

   

B型肝炎ウイルスによる肝硬変です。

肝臓の左葉は腫大し、右葉は萎縮しています。

表面はやや凸凹しており、辺縁は鈍化、内部エコーは粗造化しています。

   

   

原因がよくわからない代償性の肝硬変です。

肝臓の表面は凹凸しており辺縁は鈍化、内部エコーは粗く見えます。

    

    

C型肝炎ウイルス(+アルコール)による肝硬変です。

肝臓表面の凹凸と、辺縁の鈍化、内部エコーの粗造化、脾腫を認めました。

    

   

アルコール性肝硬変のエコー像です。

肝表面の凹凸、辺縁の鈍化、内部エコーの粗造化を認めます。

肝臓内には大小多数の腫瘤(高エコー、低エコー)がみられますが、精査の結果いずれも再生結節など良性病変でした。

   

   

非代償性のアルコール性肝硬変のエコー像です。

肝臓は両葉ともに委縮し、表面に凹凸、辺縁は鈍化しています。

肝臓周囲には腹水の貯留像が見られます。

   

    

参考資料

  

 

 

 

   

おわりに

肝硬変の原因、症状、検査、エコー像についてまとめました。

臨床症状と血液学的検査、画像診断を組み合わせてより早期に診断することで、肝臓を労わる生活に導き予後を改善することが可能になります。

画像診断の入り口になりやすいエコーを用いて的確に肝硬変を評価することは、臨床的に必要不可欠なことだといえます。

   

閲覧いただきありがとうございました。

   

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