表皮嚢腫(粉瘤)とは
表皮嚢腫は良性の皮下腫瘍のひとつであり、臨床的に最も一般的に遭遇する皮下腫瘤です。
粉瘤(アテローマ)や毛包嚢腫とも呼ばれます。
皮膚の袋状の穴に角質や皮脂がたまり、徐々に大きくなって腫瘤を形成するものです。
表皮とくっついており、下床(筋膜など)との可動性があれば、まずはこの疾患が疑われます。
感染すると腫れたり、発赤を伴う痛みを自覚する場合もあります。
原因
原因はよくわかっていないようです。
気付いたときにはできていて、あまり気にならないまま放置すると肥大化してきます。
診断
視診、触診で多くの場合が診断可能とされていますが、他の疾患(例えば石灰化上皮腫や脂肪腫)との鑑別が必要な場合はエコーや他の画像診断が用いられます。
「へそ」とよばれる毛包性の穴をみつければ診断は容易とされていますが、全例に存在するわけではありません。
エコー像
表皮嚢腫(粉瘤)のエコー像の特徴を以下に挙げます。
1.被膜を有しており、円形~楕円形で輪郭は整であることが多い
2.内部は低エコー不均一なことが多く、血流シグナルは認めない
3.内部エコーが低輝度なことより後方増強が目立つ
ここから先は表皮嚢腫(粉瘤)と診断されたエコー像を提示します。
顔面の左目の下の皮下に存在する腫瘤です。
エコー所見としては、径10mm程度、境界明瞭、輪郭整、内部はやや低輝度不均一で充実性に見えます。間接的な所見としては側方陰影、後方増強を認め、血流シグナルは認めません。
皮膚に近接しており、下床の筋膜とは距離があります。
左臀部の皮下組織内に存在する腫瘤です。
2つの腫瘤が隣り合っているようにみえます。
大きさは最大径で4cm程度、境界明瞭、輪郭整、内部はやや低輝度不均一で充実性に見えます。側方陰影、後方増強を認め、血流シグナルは認めません。
背部正中の皮下組織内に存在する腫瘤です。
粉瘤に特徴的な所見を有しており、この腫瘤の周囲には豊富な血流シグナルを認めます。この症例は発赤と圧痛を伴っており、炎症性粉瘤が疑われました。
右臀部の皮下に存在する腫瘤です。
大きさは3cm程度、境界明瞭、輪郭整、内部はやや低輝度不均一で充実性に見えます。側方陰影、後方増強を認め、血流シグナルは認めません。
典型的な表皮嚢腫の所見です。
右側頭の皮下組織内に存在する腫瘤です。表皮嚢腫と診断されました。
他にも下に挙げるような腫瘤が表皮嚢腫(粉瘤)を疑うエコー像になります。
参考文献
おわりに
表皮嚢腫(粉瘤)の背景、原因、診断、エコー像についてまとめました。
粉瘤(アテローマ)は臨床上、遭遇することの多い疾患です。
特徴的なエコー像と臨床所見を理解していれば、十分に他の疾患と鑑別可能であるといえます。
閲覧いただきありがとうございました。