脂肪腫とは
脂肪腫とは、おもに皮下組織に発生する脂肪細胞から成る良性腫瘍を指します。
弾性軟な腫瘤であり、内部は脂肪細胞で満たされ、周囲は薄い被膜に包まれています。
全身に発生しうる腫瘤であり、とくに背中や肩、腹部に多く見られます。
経時的にゆっくりと増大していき、しこりとして体表から触知できるようになると指摘されることが多いです。
脂肪腫により神経が圧迫されることで刺激症状を伴うこともまれにあるようですが、基本的に痛みなどの症状を生じることはほとんどありません。
検査
医師の診察により多くの場合は診断可能とされています。
ただし、より正確な診断を行うためにエコーやMRなどの画像検査が行われる場合もあります。
エコー像
脂肪腫は脂肪細胞が被膜で包まれた腫瘤であるため、周囲との境界は比較的明瞭なことが多いです。輪郭は整であり、側方陰影を伴います。
腫瘤の内部は脂肪層と同じように線状の高エコーを呈することがあります。基本的に血流シグナルは乏しいことが多いです。
ここから先は脂肪腫と診断されたエコー像を提示します。
左前腕を観察しています。
皮下組織内に径25×10mmの腫瘤を認めます。
境界明瞭、輪郭整、内部に線状エコーを認めます。血流シグナルは周囲のみに認めています。
やわらかい腫瘤であるため、圧迫により容易に変形していることがわかります。
エコーゼリーを多めに使うことで膨隆しているところがわかります。
右鼠径部を観察しています。
皮下組織内に30×8mmの腫瘤を認めます。
境界明瞭、輪郭整であり側方陰影がみられます。内部に線状の高エコーが確認でき、腫瘤の後方増強を認めます。血流シグナルは認めません。
左前胸部を観察しています。
皮下組織内に径60×10mm程度の腫瘤を認めます。
境界明瞭、輪郭整で側方陰影(+)、内部はやや低輝度ですが線状の高エコーを認めます。後方増強を認めており、脂肪腫が疑われました。
右肩部背側を観察しています。
皮下組織と筋膜の間に径100×20ミリの紡錘状腫瘤を認めます。
境界明瞭、輪郭整で側方陰影(+)、内部に線状エコーがあり後方増強を認めています。
胸腹部を観察しています。
触知される弾性軟の腫瘤を皮下組織内に複数認めます。
いずれもほぼ同じエコー像で、内部はやや高輝度を呈しています。
境界明瞭、輪郭整、側方陰影、後方増強を認めるものが存在しています。
参考文献
おわりに
脂肪腫の背景、検査、エコー像についてまとめました。
脂肪腫は臨床上、遭遇することの多い疾患だと思われます。
特徴的なエコー像を理解していれば、エコーで評価可能であると考えます。
閲覧いただきありがとうございました。